IT技術の発展により、機械翻訳の精度は大幅に向上しています。文書ファイルの翻訳業務の効率化には、自社に適したツールの導入・活用が有効です。レイアウトやフォーマットを崩さず、スムーズかつ正確に翻訳業務を行いたい担当者に向け、ファイル翻訳の定義や専用ツールの活用メリットを踏まえた上で、おすすめのツールを紹介します。
文書の翻訳を効率化する「ファイル翻訳」とは
「ファイル翻訳」とは、WordやExcel、PowerPointなどの文書ファイルの内容をすべて他の言語に翻訳する方法です。ファイル翻訳とともに語られることが多い「PDF翻訳」も、ファイル翻訳の一種であり、同様にPDFファイルの内容をすべて他の言語に翻訳します。
ファイル翻訳を行う際は、基本的に専用ツールを利用します。アップロードされたファイルをサーバーが取り込み、内容が翻訳されるとファイルが戻され、最後は画面上に表示される仕組みです。
ファイル翻訳の専用ツールのメリットとしては、Officeファイルのレイアウトを維持したまま翻訳できる点が挙げられます。適切なツールを選択すれば、翻訳されたファイルのレイアウト調整が不要です。オンラインで利用するタイプの専用ツールなら、従業員がソフトウェアをインストールする手間が省けて、翻訳業務の効率化を図れます。
ただし、サーバー上で翻訳される点から、ネットワークやシステムの利用状況によって翻訳速度が変わります。負荷が大きい状態でツールを利用すると、速度がダウンし、かえって業務効率が低下してしまうかもしれません。
また、有料版の専用ツールを利用しても、プランによってはファイルサイズや利用回数を制限されることがあります。利用用途に合っているプランかどうかの確認も必要です。
テキスト翻訳との違い
翻訳を行う専用ツールにはファイル翻訳だけではなく、「テキスト翻訳」を採用しているものもあります。テキスト翻訳とは、翻訳したい文章をツールに入力もしくはコピーして貼り付け、他の言語に翻訳することです。つまり、テキスト翻訳では、ファイル翻訳のようにファイル全体の翻訳は対応できません。
テキスト翻訳は、文書ファイルの一部のみを抜粋して翻訳したい場合に便利です。ただし、翻訳後の文章を貼り付けたり、レイアウトを調整したりする手間が発生します。
ファイルを翻訳する方法は2種類ある
文書ファイル全体を翻訳する方法は2種類あり、ファイル翻訳の他に「アドイン翻訳」の活用も可能です。
アドイン翻訳とは
アドイン翻訳とは、ソフトウェア自体のアドインとして翻訳機能を追加したもので、代表的なものがMicrosoft Officeのアプリケーション(OutlookやExcel、Word、PowerPointなど)に追加して利用する拡張機能「オフィスアドイン翻訳」です。Microsoft Officeの各種ファイルを開いた状態のまま、他の言語に翻訳できます。
アドイン翻訳を利用するには、利用する端末やアカウントごとに機能のダウンロード・インストールが必要です。しかし一度セットアップしてしまえば、ファイル翻訳のようなサーバー上の処理がない分、スピード感のある翻訳でさらなる業務効率化が実現します。アドイン翻訳は、基本的に文字数の制限なく翻訳できる点も魅力です。
有料のファイル翻訳ツールが選ばれる理由とは?無料版との違いを解説
文書ファイルの翻訳を効率的に行うためには、用途に応じたツールを見極めて導入する必要があります。
無料版は、文字数や利用回数が制限される場合が多く、長文の翻訳や業務としての翻訳に対応しにくい傾向があります。また過去には、無料版の利用が原因の情報漏えい事故も発生しています。セキュリティ性が高く便利なツールを活用したい場合は、企業向けのサービスが設計されている有料版を選択しましょう。
上記を踏まえ、企業向け有料版ツールをおすすめする理由をいくつか紹介します。
レイアウトを保持しやすい
有料版と無料版を比較したとき、レイアウトの崩れに差はあまりありません。ただし、多くの有料版にはプラスアルファの機能が搭載されています。例えば、翻訳後のレイアウト崩れを自動で修正・調整してくれる機能です。
翻訳時にレイアウトの崩れがあると、原文との照合が難しくなり、確認作業の負担が増えてしまいます。効率的に確認作業を行いたい場合は、レイアウトの修正・調整機能が搭載されている有料版を選択するとスムーズです。
専門用語も精度高く翻訳できる
ビジネスシーンでは、さまざまな分野における専門用語が頻繁に飛び交います。その専門用語の翻訳精度は、多くの場合、辞書登録機能が充実している有料版の方が高度です。自社特有の単語や言い回しなどを辞書登録しておくことで、より理想に近い翻訳が可能になります。
無料版では登録されている専門用語の数が少なかったり、辞書登録機能がなかったりします。また辞書登録機能があったとしても登録可能数が制限されていることが多く、自然な翻訳ができず、不便を感じることが多いかもしれません。
セキュリティ性が高い
多くの有料版は、SSL/TLSを用いたデータの暗号化やSAML認証によるシングルサインオン、アクセス権限の管理、IPアドレスのアクセス制限など、オンプレミス環境での運用や内部監査に対応した機能が備わっており、セキュリティ性が高く設計されています。
有料版では、一般的にファイルはサーバーに一時的に取り込まれ、内容が翻訳されると削除される仕組みですが、無料版の場合、翻訳に関するデータが第三者の管理下に移されてしまうことがあります。その点から、情報漏えいや不正アクセスなどが発生するリスクが懸念されます。
機密情報を含むビジネス文書の翻訳にこそ、有料版ツールを活用しましょう。
多言語対応がしやすい
有料版はひとつのサービスで、マイナーな言語を含めた複数の言語に対応しやすく、グローバルに事業展開する企業や多言語対応が欠かせない企業で重宝されます。複数の言語に対応した有料版ツールを導入し、状況に応じて対象言語を切り替えれば、スムーズな業務が可能です。
一方無料版は翻訳可能な言語数が制限されることが多く、ニーズが高い英語や中国語以外の場合はカバーしきれない可能性があります。
ファイル翻訳ツールの導入がおすすめの分野
ファイル翻訳ツールは社内文書や営業資料だけではなく、以下の分野における文書の翻訳にも役立ちます。
- 科学技術分野
- 医学・薬学分野
- 化学・農学・生物学分野
- 英文契約書や特許文を扱う分野
日本語が母国語の人にとって、専門性の高い分野の資料を読み解くには、日本語で読む方が圧倒的にスムーズです。各分野に対応した有料版を導入することで、従業員の負担軽減と効率化を図れます。
ファイル翻訳ツールを選ぶ際のチェックポイント
自社に合ったファイル翻訳ツールは、翻訳業務の効率化を目指せるだけではなく、ビジネスにおける武器としても機能します。
ファイル翻訳ツールと自社との相性を見極めるためには、以下3つのポイントをチェックしましょう。
- 対応言語・分野
- カスタマイズ性
- セキュリティ対策
対応言語・分野
ファイル翻訳ツールは多数あり、対応可能な言語や分野の数が異なります。自社に適したツールを選択するためには、ツールを比較する前に利用用途を検討し、言語や分野の条件を整理しましょう。その条件を満たすツールを絞り込むと、比較検討がスムーズです。
ニーズの高い英語や中国語以外の言語を利用する場合や、医学や薬学などの専門分野の翻訳が求められる場合、対応可能なツールが限定されます。ツールの選択肢が狭まる言語や分野においては、事前の確認が欠かせません。
カスタマイズ性
専門用語や独自の言い回しを含む文書を翻訳する場合は、柔軟なカスタマイズに対応できるツールをおすすめします。
例えば、辞書登録機能が搭載されたツールなら、「です・ます調で翻訳する」「主語をWeに統一する」など、独自の翻訳ルールの登録が可能です。
また、翻訳メモリ機能が搭載されたツールなら、自社が作成したフレーズの訳語・訳文を登録することで、次回以降の似た文章に自動で反映されます。一度フレーズを登録すれば、完全な訳語・訳文が自動作成されるため、確認作業を省けます。
セキュリティ対策
安全性の低いファイル翻訳ツールを利用したことで情報漏えいが発生した場合、企業の信頼性は低下しまいます。特に機密情報を扱う企業は、信頼性の低下を回避するためにも、セキュリティ対策が充実したツールを導入すべきです。
「SO27001(ISMS 認証)」を取得している企業のツールは、高度なセキュリティ基準を満たしていることを証明しています。また、ツールの利用規約やプライバシーポリシーも併せてチェックしておきましょう。
機密性の高いファイルの翻訳が多い場合には、オンプレミスタイプのツールの導入をおすすめします。オンプレミスタイプは、安全性の高い社内ネットワーク環境下でしか運用できないため、情報漏えいのリスクを軽減できます。
もちろん、ツールを利用する従業員も「サポート期間が過ぎたOfficeソフトウェアは利用しない」「業務上、必要がある情報のみにアクセスする」など基本的な対策を行うことが大切です。その他、従業員や部署ごとにアクセスできる情報を制限する方法や、データの暗号化やシングルサインオン機能を利用することなどもセキュリティ対策に有効です。そしてこれらが守られるよう、ルールを作って周知させる必要があります。
これらを行ったうえで、ファイル翻訳ツールに対しても、権限設定に異常がないかなどを注視する体制を整えると良いでしょう。
高精度でセキュアな翻訳プラットフォーム「WEB-Transer@Enterprise(AI)」
株式会社クロスランゲージが提供する「WEB-Transer@Enterprise(AI)」は、翻訳業務の効率化から翻訳データの蓄積・再利用までを、ワンストップで支援できる多機能なシステムです。
また、ファイル翻訳とアドイン翻訳の両方に対応していますが、よりスピーディーなアドイン翻訳をおすすめします。
WEB-Transer@Enterprise(AI)の主な特徴は、以下の通りです。
- WordやExcelのファイル翻訳をワンクリックで実現
- カスタマイズ可能なAI翻訳で業務に最適化
- 機密情報を守るための高度なセキュリティ対策
WEB-Transer@Enterprise (AI) – 【公式】株式会社クロスランゲージ
WordやExcelのファイル翻訳をワンクリックで実現
WEB-Transer@Enterprise(AI)には、WordやExcel、PowerPointなどのOfficeファイルの翻訳に対応した「Officeアドイン機能」が搭載されており、ワンクリックで簡単にファイル全体の翻訳が可能です。
翻訳を行う際に、自動で文章の長さを測定し、フォントサイズを調整する機能もあるため、レイアウトを崩さずに、アドイン機能ならではの効率的な翻訳が実現します。
カスタマイズ可能なAI翻訳で業務に最適化
WEB-Transer@Enterprise(AI)では、「ユーザー辞書機能」や「カスタム学習オプション」を活用し、自社の業務に合わせて翻訳精度を最適化できます。
ユーザー辞書機能とは、業界特有の専門用語や製品名、自社のみで使用している表現を辞書登録する機能です。従業員が個別に辞書登録した用語や表現は、自社内で共有できます。
カスタム学習オプションとは、蓄積した翻訳データをもとに、自社独自の翻訳エンジンを構築できるオプションです。蓄積した翻訳データをご提供いただければ、自社専用翻訳エンジンをアップデートすることが可能です。
機密情報を守るための万全なセキュリティ対策
WEB-Transer@Enterprise(AI)にはオンプレミスであり、企業内部に構築したサーバー上で翻訳処理を行えるため、外部への情報漏えいのリスク軽減が可能です。
また、クロスランゲージでは、2012年10月より情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO 27001」の認証を取得しておりましたが、2024年10月14日付でISMS新規格への移行が完了しております。高い信頼性と万全なセキュリティ対策の下で運用できます。
参照元:株式会社クロスランゲージ「ISO27001(ISMS) 新規格への移行について」
まとめ
ファイル翻訳とは、文書ファイル全体を他の言語に翻訳する方法です。専用ツールには有料版と無料版があり、機密情報を扱う企業は情報漏えいや不正アクセスのリスクを軽減するために、有料版の導入をおすすめします。ツールを選ぶ際は、対応している言語・分野の数、柔軟なカスタマイズ性、万全なセキュリティ対策に要チェックです。
クロスランゲージが提供する「WEB-Transer@Enterprise(AI)」は、ファイル翻訳とアドイン翻訳の両方に対応している安全性の高いツールです。自社に適しているかどうかを見極めたい場合は、公式サイトの製品サービスのページから「資料ダウンロード」が可能なので、ぜひ活用してみてください。